僕はいくつかブログを執筆していますが、プライベートな内容の記事を投稿できるブログが他にないので、こちらのブログで表題のニュースについて思う所を書いていきたいと思っています。
ご存知ない方のためにお伝えしておくと、僕は旅行業界で約15年働いていた経験があります。
JTBで働いたことはありませんが、彼らのライバルの大手旅行会社に所属していたことはあります(添乗員時代はJTBの仕事をしていたこともあります)。
業界ではぶっちぎりのJTB
僕が旅行業界にいた頃、業界誌を定期購読していました。そこには大手旅行会社の売り上げや利益などが公表されており、他の4社を大きく引き離してJTBがダントツのトップに君臨していました。
だから今回のニュースには少し驚いています。今では当事者ではなく、外野になってしまったので詳しい状況はわかりませんが、JTBがそこまで危機的状況にあるとは想像もしませんでした。
僕は日本、ベトナム、シンガポール、カナダで旅行業に従事していました。
皆さんが知っているような大手旅行会社で、このすべての国に支店をもっているのはJTBとHISだけです。
驚くかもしれませんが、日本では名の通った旅行会社も、国によって海外の現地支店が虫の息まで追い込まれている会社もあります。
僕が業界にいたころ、JTBはそんな様子はまったくありませんでした。
まあ、今回の1件はブラジルの子会社が関係しているようですから、他の国に直接影響はしていないのでしょうが。
ただ、今から10年前にベトナムにいたとき一番好調だったのはHISでした。
シンガポールとカナダでは圧倒的な強さを誇るJTBも、当時のベトナムでは非常に陰が薄かった印象があります。
強いものが生き残るのではなく、変化できるものが生き残る
見出しのセリフはダーウィンの名言を少し短くしたものです。
僕が業界の時代の変化を強く感じるようになったのは、シンガポールで働いていたときです。
当時まだ日本にLCCが参入する前でしたが、シンガポールではLCCが猛威を振るっており飛ぶ鳥を落とす勢いでした。
そして、現地の人間が旅行をするときは、AGODAやEXPEDIAなでのホテル予約サイト(実際は場貸しサイトですが)で、ホテルを予約するのが一般的でした。
当時、日本では相変わらず従来の来店式の旅行販売が一般的だった時代です。
これから旅行もインターネット販売が主流になるということは、誰の目にも明らかだったと思いますが、対応をとっている会社はほとんどありませんでした。
日本人的マインドといいますか、新しいもの(変化)に対する寛容性が極めて低いのが原因だと思います。特に古い会社ほどその傾向が強いように思います。
JTBはそこまでフットワークが重かったわけではありませんが、他の大手の旅行会社は非常にフットワークが鈍いところもありました。
その結果新規参入のオンライン旅行販売の会社に、大きくシェアを奪われることになってしまったのです。
皆さんもご存知の楽天はもともと旅行会社ではありません。
旅行業界ではかなり後発にも関わらず、当時読んでいた業界誌によると国内旅行の販売ではトップ5に入っていました。
HISが業界であそこまで大きくなったのも、ベンチャー旅行会社としてフットワーク軽く攻めの姿勢を崩さなかったからです。
大手旅行会社の現地法人は、基本的に日本から来るお客さんの現地手配のみで利益を出しています。
つまり、日本からの送客が途絶えてしまったら海外支店も心中してしまうわけです。
でも現地で日本人以外のマーケットを相手にビジネスをしていれば、仮に日本からの送客が途絶えても、何とか生き残ることができるのです。
当時、それができていたのはHISとJTBだけでした。
僕も当時所属していた会社のボスに掛け合って、現地側での新規ビジネスを立ち上げさせてもらいました。
もはや個人旅行の時代
従来はパッケージ型の団体旅行が一般的でした。
カナダでは大手旅行会社の現地支店ではなく、現地の日系ランドオペレーターで働いていましたが、やはり送客のメインはパッケージ旅行でした。
僕がカナダの旅行業で働いていた時も、古い人たちは「昔は今の10倍近いお客さんが来ていた」と口癖のように言っていました。
カナダは自然に依存した観光スポットが多く、新しいコースなどを開発するのが難しいためいたしかたない部分もありますが、ただ指をくわえて待っているだけでは生き残ることはできないと思います。
だから僕も当時の社長に相談して、現地在住者に旅行を販売したり、インターネットでオプショナルツアーを販売したりしていました。
当時から強く感じていたことですが、パッケージ旅行は今後どんどん規模が縮小していくと思います。
そして旅行販売もオンラインが一般的になるでしょう。
忙しい社会人からすると、わざわざ自分の時間を割いて旅行会社のカウンターに出向かずとも、パソコンやスマホで飛行機やホテル、オプショナルツアーが予約できます。
必要な情報もネットを調べれば大体わかります。
要するに旅行会社のカウンターに出向く必要性が、どんどんなくなってくるということです。
昔は個人で旅行を手配することができませんでした。
だから旅行会社を通して予約する必要があった。
でも今は全部自分できるし、情報だって手に入る。
カウンター業務のように人件費がかからないので、オンラインで購入するほうが安いことが多い。
そして今の若い世代の人にはパッケージ旅行はそぐわないです。
旅行代金が安くても、ホテルも食事もスケジュールも自分で決めることのできない自由度の低い旅行に参加したい、という若者は少ないです。
カナダのときも個人旅行で来ているお客さんは若い世代が中心でした。
そして今の若い世代が20-30年後に旅行マーケットの中心になってきます。
いつまでもパッケージ型の旅行を店舗販売することにこだわっていては、間違いなく時代の波に乗ることはできないでしょう。
未来の旅行スタイル
未来の旅行スタイルはより欧米化していくと思います。
僕はよく欧米人との比較で「日本人がしているのは観光で、欧米人がしているのは旅行」という表現を使っていました。
日本人は旅行に行くと何かとスケジュールを詰め込み、できるだけたくさんの観光をしようとします。
それに対し欧米人は何もせず、ただホテルでのんびり過ごすだけの旅行ということがざらにあります。
彼らは観光するのが目的ではなく、リフレッシュするのが目的だからです。
それは単純にバケーションが長いからという理由だけではありません。
そもそもの旅行に関する考え方が違うのが根本的な理由です。
たとえ、日本人が同じ期間バケーションに行ったとしても、1日2日ホテルでのんびりることはあっても、バケーション期間中の大半をホテルでのんびり過ごそうと思う人は少ないでしょう。
旅行というのは非日常を味わう経験ができることが一番の価値です。
観光をすることも非日常ですが、忙しい毎日を忘れさせてくれるゆったりとした時間を持つことこそが、これから日本人にとって大きな価値をもたらすことになると思います。
コロナウィルスの影響で大手旅行会社は瀕死の状態
当記事を投稿してから約1年が経過しました。
2020年にコロナウィルスの世界的感染拡大の影響により、
旅行業界は甚大な被害を被ることになりました。
SARSや9.11の時は国内旅行でなんとかカバーできましたが、
今回は国内旅行すらできない状況なので、
旅行会社にとってはなすすべもない状態です。
大手旅行会社も軒並み業績を下げ、
前年比1~3%というあり得ないような状況になっています。
以下、ダイアモンドオンラインからの抜粋です。
5月の旅行取扱額実績、前年同月比1.2%――。近畿日本ツーリストを傘下に持つKNT-CTホールディングス(HD)の国内、海外のすべての旅行の取扱高を示す数字だ。昨年5月は500億円を超えていた取扱高が、今年5月は6億円にまで激減している。4月も同2.6%にとどまった。
エイチ・アイ・エス(HIS)の国内外の旅行総取扱高の速報値も4月は同1.5%、5月同1.8%と同様にビジネスが“蒸発”した。観光庁が7月17日に発表した主要旅行会社の5月の旅行取扱高によると、JTBが3.6%、日本旅行は1.8%と実に厳しい。
大手旅行会社こそランニングコストがかかるので、
コロナのような状況下では不利であると言えます。
この記事を追記しているのが2020年7月ですが、
このままコロナが長引けば大手旅行会社が総崩れになる可能性もあります。
旅行業にも変革の時代が訪れているということでしょう。
こちらの記事もご覧ください。
最後まで読んでいただきありがとうございます。