先日、業界未経験の人でも比較的採用されやすい海外就職の求人として、ランドオペレーターというものを紹介しました。
こちらの記事です。
ランドオペレーターという業種がわかりづらい人は、海外就職の求人に出ている現地旅行会社は9割方ランドオペレーターだと思ってください。
僕自身も3か国約10年に渡り、ランドオペレーターとして働いてきました。
ランドオペレーターは先読み能力や、仕事を効率的にさばくスキル、瞬時の判断力が必要とされる、とてもやりがいのある仕事です。
今の時代はそうでもありませんが、少なくとも僕の世代が就職活動をしていたときは、旅行業界というのは花形として、人気の高い業界の一つでした。
ましてや「海外勤務で旅行業で働けるならぜひやってみたい」という人もいるかもしれないので、今日はそういう人のためにランドオペレーターで働く大変さをお伝えしていきたいと思います。
僕が添乗員をやっていたときもそうですが、「旅行が好き」とか「旅行業にあこがれがある」と言う人は、かなりの高確率で辞めていきました。
それは、理想と現実のギャップがあまりにも大きすぎたからだと思います。
ランドオペレーターの大変さ
①無理難題を押し付けられる
「日本の常識は世界の非常識」とよく言いますが、僕はまさにその通りだと思っています。
日本で旅行会社がお客様の旅行を手配する場合、無理難題がリクエストとしてきたとしても、無理を言えば大抵の業者はその要求を受け入れてくれます。
ただ、海外では「顧客が絶対的に偉い」という力関係は存在しません。
つまり、どんなにお願いしても「無理なものは無理」と業者側に簡単にあしらわれてしまいます。
わかりやすい例でいうと修学旅行などがそうです。
日本国内の修学旅行だとホテルのフロアをその学校で貸し切って、なおかついつでも生徒の部屋に入れるように、引率の先生がスペアキーを持っていたりします。
さらに、いたずら防止のため部屋にある内線電話をカットしている学校がほとんどです。
また、他校とのトラブルを避けるため、基本的に同じ宿泊施設に複数の学校が滞在することはありません。
しかし、海外ではこれらのルールは一切通用しません。
ホテルもビジネスなので、その学校のために1フロアまるまる貸し切りなんて対応は不可能だし、スペアキーを宿泊客に渡したり、内線電話をカットすることは防犯上NGとされています。
また、日本のたった1つの学校のために、他の学校の受け入れを拒否することはしません(キャパの問題で拒否することはある)。
こういったリクエストというのは、現地の業者からすると理解不能なわけです。
日本人の扱いに慣れている業者であれば多少融通を利いてくれることはありますが、基本的に理解してもらえないことがほとんどです。
しかし、日本側は「日本だったらそれぐらいやってくれて当たり前だ」と主張して、ごり押しをしてきます。
大抵の場合、クライアントと我々の間には日本の旅行会社のセールスマンが存在します。
彼らは業界の人間ですから、現地の事情をよく理解してくれる人がほとんどです。
彼らもそういったリクエストは受け付けてもらえないことを理解していても、日本のことしか知らないクライアントは、「日本ではそんなことありえない」の一点張りで、海外の事情を理解してくれない人もたくさんいます。
僕たちは日本のクライアントと、現地の業者の両方の立場に立って交渉する必要があるため、非常にストレスが溜まります。
みなさんも海外旅行にいくときは「日本だったら当たり前」という考えは捨ててください。
②理不尽に怒鳴られる
これは別に海外で働かなくても普通に経験することだと思います。
ただ、海外はこういう状況に巻き込まれる確率が非常に高いのです。
特にあまりオーガナイズされていないような発展途上国で、こういったトラブルが起こりやすいです。
東南アジアは安価で旅行することができます。言い方は悪いですが、安価な商品はどうしても一定数の質の低いお客様が来てしまうものです。
海外では、日本のように物事がスムーズに行かないことというのは日常茶飯事です。
つまり、それだけトラブルも発生しやすいということです。
ベトナムにいた時なんかは、毎日のように「お湯シャワーが出ない」というクレームがありました。
大抵の場合、「30分程度待っていただければ」と説明してくれれば納得してもらえますが、ひどい人だと「ホテルまで謝罪に来い」という人もいます。
ちなみにお湯シャワーが出ないのは、旅行会社側に一切の落ち度はありません。
また、あるときは「タクシーでぼったくられたから何とかしろ」と怒鳴られたこともありました。
しかし、タクシー会社の名前も、ドライバーの名前や写真もナンバープレートの情報も何も一切手がかりがないので、「我々の力ではどうすることもできない」ということをお伝えすると、「それをなんとかするのが、お前たちの仕事だろ」とどなられました。
ちなみに個人行動中の私的なトラブルに関しては、旅行会社側に責任はありません。
もちろん、最大限のサポートはしますが、この時のように何も手がかりがなければ「なんとかしろ」と言われても、どうすることもできないのが現状です。
また、海外ではチェックイン時にデポジットの支払いをするか、クレジットカードの掲示が必要になります。
しかし、日本ではそういったルールが存在しないため、チェックイン時に揉めることがたまにあります。
「クレジットカードに一時的にチャージされても、チェックアウト時にチャージがキャンセルされるのでご安心ください」と説明しても、「日本じゃありえない。ホテルまで謝罪に来い」と言われ、小一時間説教されました。
ちなみにチェックイン時のクレジットカード掲示は世界のスタンダードで、旅行会社側に(以下略)。
ランドオペレーターで働くと、こういった状況に遭遇しやすくなるのは、
①海外は日本のようにオーガナイズされていないので、トラブルが起こりやすい
②業者には日本語が通じないので、怒りの矛先がこちらに向いてしまう
といった要素があるからだと考えられます。
③24時間365日勤務
海外ではトラブルに巻き込まれたお客様のために、現地緊急連絡先というものが存在します。
その電話番号は会社の携帯電話につながっており、スタッフが持ち回りで自宅まで持ち帰ります。
この電話はいつなんどきかかってくるかわかりません。
深夜にお客様から電話がかかってきて、バイクを飛ばして夜中の病院にいったこともあるし、家族で過ごしていた時間にトラブルが発生し、その日の予定をすべてキャンセルし、トラブルの対応にあたるなんてことも日常茶飯事です。
時には夜中にホテルに呼び出され、深夜まで説教をされるなんてこともあります。
車を運転していようが、シャワーを浴びていようが、寝ていようが、緊急連絡先にかかってきた電話はでなければなりません。
そして、その電話は絶対にトラブルかクレームです。
多くのスタッフはこの業務で精神的に疲弊してしまいます。
ベトナムで働いていた時は、僕含めた日本人スタッフは携帯の着信音を聞くだけでビクッと反応してしまうぐらいノイローゼになっていました。
基本的には何人かの日本人スタッフで持ち回りなので、毎日電話対応をしないといけないわけではありませんが、カナダで働いていた時は小さなオフィスだったので、僕が1人で24時間365日携帯電話を持ち歩いていました(カナダはトラブルも少なく、お客様の質も高いのでそこまで疲弊することはない)。
まとめ
ランドオペレーターはやりがいがあって、慣れてくるととても楽しい仕事です。
ただ、憧れだけでその仕事についてしまうと、理想と現実のギャップの大きさにショックを受け、仕事をやめてしまうことにもなりかねません。
今日はネガティブな側面ばかりをお話ししましたが、もちろんポジティブな側面もたくさんあります。
もし、あなたが海外就職に挑戦してみたいのであれば、ぜひランドオペレーターも検討してみてください。